抗がん剤ゼローダ(Xeloda)の服用サイクルから考えても3週間以内なら物理的には可能であることを思いついた海外出張と言う名の「国外逃亡」。
会社や家族を丸め込むのを考えるのが楽しくてしょうがない私、しかしなかなか妙案が思いつきません。
ただ、目標達成のために思案中の私は明らかに「退屈」だとか「ストレスを感じる」だのと言ったネガティブな思考からは解き放たれていました。
これはこれで良い治療法であることには間違いないのですが、目標はあくまでも「国外逃亡」。
思案を続けていた私ですが、最終的に使用したのは『寝技』というか、『アウトコースから外角へ外れるスライダー』的な手法だったのです(笑)。
まぁ、そんなに大袈裟なやり方ではないのですが、要は外国にお願いしてもらうという至って簡単で単純なやり方ですね。
いろいろ海外をウロついていましたので、個人的にも贔屓にしてくれる取引先と言うか協力会社と言うかお友達というか、そういう関係の外国人が結構いる私は、片っ端から彼らにメールで打診。
彼らとしても、半分は私が持参する「日本のお土産」目当てか、私の訪問はいつも歓迎してくれるのです。
幸い社内でも私しか付き合いの薄い相手先も少なくなく、「あそこへ出入りできるのは、アイツしかいないよな」的な雰囲気も醸し出しており、意外とすんなりと感謝側からこんな言葉を引き出せたのでした。
「治療中に悪いんだけど、ちょっと海外へ出張に出れないか?」
迷ったフリはしているものの自分の中では返事は決まっています♪
後は家族に「どうしても俺じゃないとダメみたいなんだよぉ」なんて言っておけば、完全犯罪の成立。
こうして見事、タイ-ベトナム-カンボジアの3か国の周遊出張を手にした私でしたが、思わぬ条件と付きつけられたのでした。
それは、
「渡航先で服用している抗がん剤であるゼローダ(Xeloda)が入手できること」
というお達し。
渡航先となるこれら3か国のうちで一番医療事情は発達しているのは、お察し都の通りタイのバンコクなのですが、日本の病院よりもよく通っているバンコクの外国人も診察・治療してくれる病院に問い合わせるも処方はできないとのこと。。。おそらく、ベトナムやカンボジア辺りでも無理だと思いこれらの国には問い合わせることを断念。
しかし良く考えるとゼローダ(Xeloda)というお薬、服用しないと大事に至るような性格のものではないし、むしろ体調を崩すと服用を中止するタイプ。
どうやら治療方法と薬の性格と位置づけを知らない会社側は、「薬の服用を怠ると大事に至る、もし渡航先で紛失しても入手できる術を用意しておかないといけない」と判断した様子。
目標を目の前にぶら下げられて鼻息荒くしかも冴えている私は、会社側へその旨を説得し晴れて国際線のチケットを手にすることが出来たのでした。
当然、出張ですのでそれなりのミッションは背負って出発するのですが、この時点で妙な満足感に浸る私。
“やっぱり「鵜」は、いつまで経っても「鵜匠」にはなれないなぁ。。。”
なんて思いながら、荷造りに精を出しながら頭をよぎったことは、
“できれば、放し飼いの「鵜」になれないものかなぁ。”
ということでしたが、これ以上社内で自由奔放に過ごすことは難しいのでしょうし、自由を追い求め会社を辞め独立する甲斐性もない私。
会社と言う組織の“ぬるま湯”に慣れ切った私は、このまま“ぬるま湯”の中でふやけていくことを改めて決意するのでした。