術後の抗がん剤治療として「ゼローダ(Xeloda)」を選択した私。
これなら社会生活を送りながら続けられると思っていたのですが、すぐに副作用に見舞われ始め心身ともに冴えない日々を過ごすことになるのでした。
ただ、私を悩ませた副作用とは一般的に言われているものとは違い、治療前の説明用パンフレットにも記載されていない現象だったので少し戸惑いました。
その副作用とは、『呂律が回らなくなる(呂律障害)』症状だったのです。
よくお酒を飲むと呂律が回らなくなる人を目にすることもあると思いますが、症状はまさに同じ。
酒も飲んでいないのに、呂律が回らなくなるのです。
当然ですが、会社に行っても挨拶や会議など言葉を発するというのは重要なコミュニケーション手段。
本来は話し好きな私ですが、この呂律障害のおかげで会社でも徐々に無口になり勝手、自宅でも家族の会話から遠のいていく生活に。
周囲も気を使って私に優しく接してくれるのですが、それがまた私の心を傷つけていたのでしょう。
“こんな小さなコトで何て情けない男なんだ。。。”
世の中にはもっと重度な副作用に悩まされながら闘病生活を送られている方も多いでしょうし、単なる副作用で後遺症ではないのです。
ましてや、まだこの世で生命活動を維持しているわけですから悲壮感に浸る必要なんてないはずなのに。。。
そんなことを考えていると、ますます自分のことが嫌いになり「負の連鎖」に陥っていったのでした。
その他の顕著な副作用と言えば手足の爪の色が変色するくらい、どう考えても副作用の症状としては“軽症”のはず。
そうなってくると余計でも呂律障害のことばかりが頭の中のかなりの割合を占めていたのかもしれません。
そんな中で私の意識を変えてくれたのが、阪神タイガースの原口選手でした。
生まれつきの阪神タイガースのファンである私、ほぼ同じ時期に彼が大腸癌を患ったことは知っていました。
育成枠から這い上がってきた原口選手は個人的にも好きな選手、しかし大腸癌の件を知り彼の選手生命は終わったと思い込んでいました。
しかし、ご存知のように見事に復活、しかも活躍しているではないですか。彼は再びグランドに立つことを諦めず日々努力をしていたことは言うまでもありませんし、彼は抗がん剤を飲みながらプレイしていたんですねぇ。
それに引き換え私ときたら。。。恥ずかしくて、しばらくの間は彼の姿を画面で直視できませんでした。
この原口選手が私の「やる気スイッチ」を押してくれたことには間違いありません。
また、阪神タイガースには糖尿病を抱えながら頑張っている岩田稔投手もいますし、一層彼らの活躍が私を元気づけてくれるのでした。
“こんなところで阪神タイガースに助けてもらうとは、これも何かの縁に違いない”
例年にも増して私の“タイガース愛”が燃え上がり、一喜一憂しながらも憂鬱だった抗がん剤治療を支えてくれたのでした。